JSME関東支部シニア会からのお知らせ

シニアの持つ経験、技術、知恵の継承

シニア会たより 第19号

趣味がトライボロジーと繋がっている・・・

野口 昭治

【カテゴリー:随想・機械】

 

 私は今年で63歳になる。若いころの私は、スポーツ全般が好きであり、よく体を動かしていたが、50の後半を過ぎたあたりから体を動かす機会が減り続け、最近では記憶からも消え失せつつある。文化的な趣味はほとんどないため、体を動かすことが無くなってくると、残る趣味は“転がり軸受”だけになってしまうことになる・・・。そこで、今回は自分の趣味について振り返ってみることにする。

 子供の頃は走るのが好きで、中学になると陸上競技部に入った。高校になっても陸上競技を続けたので、中高の6年間は走りっぱなしであった。大学になると、さすがに“走り疲れた”と感じて、準硬式野球部に入部した。“準硬式”という聞きなれない名前がついているが、これは使っているボールが、外見は軟式球、内側は硬式球になっており、硬式と軟式の間のボールを使っていることに起因している。一見、軟球に見えたので、当たっても痛くないと思って入部したが、結構痛い思いをした。

 会社に入っても野球は続けたが、屋外競技であり、雨が降ったら予定が流れてしまうことも度々あったので、何か屋内スポーツを始めてみよう、と思った。私は転がり軸受メーカーに入社したが、工場の方にボウリング部があることを知ったので、ボウリング場まで見学に出かけた。ボウリングは小学校以来であったが、娯楽が目的であり、競技スポーツとしては、非常に新鮮に映った。即、入部し、練習の日々が続いた。競技としてボウリングをするには、アベレージとして180以上でないとみっともないので、当時は週5でボウリング場通いをした。基本的に平日の夜はボウリング場に居たことになり、かなりの出費をしたが、その甲斐あって試合に出られるレベルに達した。

 ここで一考。ボウリングは、レーン上をボールを転がして、ピンを倒すスポーツである。レーンには薄く油が塗られており、ボールとの間には油膜が形成されて・・・などと考えると仕事で研究している玉軸受の転がり摩擦ではないか、と気づいた。投球された直後は、ボールは滑りながら転がるが、その後転がりだけになり、レーンに塗られた油が無くなった地点でグリップ力が増して、曲がるようになる。高スコアを出すためには、レーンに塗られた油の状態を把握して、曲がりを予測して投球することが重要となる。無意識ではあるが、頭の中でトライボロジー的なことを考えながら、投球をしていたことになる。

ボウリングは生涯スポーツと言われており(走らないから)、若い時に集中して技能を向上させると、年をとっても忘れない。いずれにしても、私の老後は、“転がり”と縁が切れないようである。

十数個目のマイボール