JSME関東支部シニア会からのお知らせ

シニアの持つ経験、技術、知恵の継承

シニア会たより 第18号

工作を楽しむ

新山 時弘

【カテゴリー:趣味】

 

六畳部屋の片隅に置かれた机が私の工作場である。机の上には工具が所狭しと、並んでいる。以前、西田明夫著の「魔訶不思議図鑑」でオートマタ(動くおもちゃ)に興味を持ち、定年後はのんびりと作ってみたいと思っていたが、今では定年後に通い始めたおもちゃ病院の修理場となっている。ある時はラジコンカーの修理工場(写真1)、ある時はプラレールの車両工場、またある時は犬のぬいぐるみの手術場となる。デニムの前掛けに妻の手作りのメガネチェーン、頭には拡大鏡、と一丁前の職人気取りである。ユーチューブのジャズを聞きながらヤスリがけを始める。時間がゆったり流れ、至福の時である。

 おもちゃ病院には多くのラジコンカーがやってくる。その故障の多くは、水たまりを走らせたことによる電気部品の腐食とクラッシュによる機械部品の損傷である。 先日も小学一年生くらいのこどもが、壊れたラジコンカーを直してほしいとやってきた。見るとステアリングのロッドが見事にポッキリ。(写真.2)

破断部は接着しにくい材料(PP樹脂)で接着面も少ない。接着修理してもハンドルを動かしているうちにまた折れてしてしまうだろう。修理には時間がかかるため工作場に持ち帰った。 折れた個所は金属部品で補強することにした。まずは、泥や汚れを洗い流すことから始める。次に補強部品の作製にとりかかる。厚紙とはさみを使って部品形状を検討する。その厚紙でできた部品の寸法をポンチ絵に写しとる。その後、真鍮板を糸ノコで切り出し、ヤスリを使って加工していく。(写真.3)

余談だが、故障が送信器か受信器かを見分けるため、発信器からの電波を捉えて音で知らせる、簡易型ラジコン電波検知器も作った。(写真.4)

どうすればもとの機能を取り戻せるかを考えながら、自分の手で部品を作る時が楽しく、 ゆったりした時間がとても心地よい。感覚や経験がたよりの手加工はとても難しいが、 未熟な加工でも思った形状ができるとうれしくなる。(写真.5)

後日、もとどおりにして渡すと、こどもはとてもうれしそうな顔をして、小さな手に大きなラジコンカーを大切そうに持って帰っていった。 ほっこりする時間をもらった。

写真 1 工作場             写真 2  壊れたロッド

 

写真3 (左 作製した補強材  右 乾電池と比べて大きさを示す)
写真4 ラジコン電波検知器  (左 外観  右 内部)

写真5 修理完了